出張講座JASRACラーニングスクエア

はじめに

2025年12月16日、JASRACラーニングスクエアの出張講座が埼玉県春日部市役所の主催により開催されました。その内容と当日の様子をご紹介します。

１ 応募者について

今回の応募者は、春日部市の総務部人事課の小柏さんです。
関東平野のほぼ中央、埼玉県の東部に位置する春日部市は、アニメ「クレヨンしんちゃん」のゆかりの地として知られています。2024年1月に開庁した新庁舎では、同アニメに登場する野原一家のキャラクターのモニュメントが来館者をお出迎えしています。
春日部市では、過去に毎年、著作権に関する研修を実施していましたが、コロナ禍で一時中止となったこともあり、近年はあまり実施できていなかったそうです。小柏さんは、研修計画を見直した際に、自治体の業務を行う上で著作権の知識を身につけることは必須であると考え、無料で専門家を招聘できるラーニングスクエアにご応募されました。

２ 講師について

講師を務めたのは、池村聡弁護士（三浦法律事務所）です。池村弁護士は、知的財産分野やAI・エンターテインメント分野等の法務を専門とされています。『実務者のための著作権ハンドブック（新版）』（2022年、共著、CRIC）などの著書も多数執筆されており、今回の講座では法制度の説明にとどまらず、実務的な観点からも著作権の知識や考え方についてご講義いただきました。

３ 受講者について

研修は春日部市役所の全部署を対象に行われ、「クレヨンしんちゃん」とコラボレーションしたPRなどを担当するシティセールス広報課をはじめ、市政情報課など幅広い部署から総勢50名が参加しました。

４ 当日の様子・講義の内容について

講義は春日部市役所内の会議室で、13時30分から90分間に渡って行われました。
テーマは「著作権法入門」。池村弁護士は、「基本知識を押さえて、著作権と上手に付き合うコツを知ってほしい」と述べて講義を開始しました。

これまで多くの著作権事件を担当してきた池村弁護士らしく、自治体の広報資料に著名アーティストの作品が無断で使用されていたケースなど、たくさんの具体的な事例を取り上げながら講義が繰り広げられます。

「自治体業務と著作権の関係」を説明する場面では、著作権侵害という直接的なリスクに加え、侵害を疑われて訴訟に発展するリスクや、法的に問題なくともSNSで炎上につながるリスクもあることを強調。「これくらいバレないだろう」と安易に他者の作品を流用することの危険性について注意を促しました。

また近年、様々な場面での利活用が進む生成AIにも言及。法的な見地から解説を行いつつ、「生成AIは注意点を守って賢く利活用することが重要」と、実務的な視点にも立って親身に活用方法をアドバイスされていました。

池村弁護士は「著作権を侵害してしまわないことは重要だけれど、著作権を恐れ過ぎないことも同じくらい重要」と話します。「『著作権のせいで面倒くさい』ではなく、『こうすれば適法に利用できる！』という視点をもって著作権と上手に付き合ってほしい」とメッセージを贈り、講義を締めくくりました。

５ アンケートの結果

当日参加された受講者の皆様にはアンケートをお願いし、次のようなご感想をいただきました。
・必要以上に恐れる必要はないものの、業務上何かを作成したりするときに「著作権を侵害していないか」という視点をもつことが重要であると認識できました。
・著作物の制作により発生する権利や例外規定、著作者と契約を締結する際に注意するべき事項について分かりやすく解説していただいた。
・ホームページ作成やパンレット作成などに活用できそう。

アンケートにご協力いただき、ありがとうございました。

最後に

ご応募いただいた春日部市の小柏さん、受講された市職員の皆さん、この度はありがとうございました。
出張講座JASRACラーニングスクエアでは、今後も様々なテーマで著作権に関する講座を開催してまいります。

（文責：事務局員）