出張講座JASRACラーニングスクエア

はじめに

2024年12月7日、JASRACラーニングスクエアの32回目となる出張講座が、浜松市文化振興財団の主催により開催されました。

この出張講座は、浜松市文化振興財団が企画・運営する「主催者育成セミナー」（全12回）の中で、第9回目のセッションとして開催されたものです。その内容と当日の様子をご紹介します。

１ 浜松市文化振興財団および主催者育成セミナーについて

浜松市文化振興財団は、ローランド、ヤマハ、カワイといった世界的な楽器メーカーが集まり「楽器の街」として知られる浜松市を拠点に、地域の文化芸術活動の振興に取り組んでいる団体です。「音楽のまちづくり」を掲げる浜松市の方針のもと、国際的なコンクールの開催や音楽教育機関の運営など、多彩な文化芸術活動を展開しています。

その取り組みの一環として「主催者育成セミナー」を開催しています。このセミナーでは、一般公募で集まった参加者が、コンサートの開催に必要な企画制作・舞台演出・出演交渉・広報戦略・アーツマネジメントなどの知識を体系的に学びながら、実際にコンサートを企画・運営します。全国的にも珍しい内容で、これまでに浜松市内や静岡県内だけでなく、県外からも参加者が集まった実績があります。

主催者育成セミナーの修了生は、これまでに300名を超えており、市民オーケストラの結成や海外から著名な演奏者を招聘したコンサートの開催など、地域の文化芸術活動の担い手として活躍されているそうです。

２ 応募者について

今回の応募者は、浜松市文化振興財団の文化事業課で、人材育成を担当されている梅田徹さんです。
梅田さんは、コンサートで音楽を利用する際に必要となる著作権や利用手続きに関する知識を、実際にコンサートを企画・運営しながら実践的に学ぶ機会を提供したいと考え、JASRACラーニングスクエアに申込されました。

３ 講師について

今回の講師は、JASRAC静岡支部長の中尾悠里です。JASRAC静岡支部は、静岡県内で演奏会や社交場、BGMなどの音楽利用に関する許諾業務を担当しており、主催者育成セミナーでコンサートを開催する際には、音楽利用に関する著作権手続きの申請窓口となります。中尾は、静岡支部の業務を統括する立場から、豊富な知識と経験を活かして講師を務めました。

４ 受講者について

受講者は、コンサートの企画・運営に関心を持つ主催者育成セミナーの参加者10名です。年齢層は10代から60代までと幅広く、専門学校生や会社員、ピアノ講師、吹奏楽団や合唱団のメンバーなど、多様なバックグラウンドを持つ方々が集まっています。

５ 当日の様子・講義の内容について

今回の講義は「イベント主催時に必要となる著作権手続きについて」というタイトルで、19時から約60分間に渡り行われました。

講義の冒頭で、講師の中尾は、音楽を利用するイベントを企画する際、著作権処理を適切に行って音楽利用を可能にすることは、企画どおりのイベントを実現するために必要となる主催者のスキルであると説明し、本講座で学ぶ意義を伝えました。

講義内容は、前半に、著作権法の基礎的な知識として、著作物・支分権・保護期間・権利制限などについて解説し、後半に、音楽利用の許諾手続きについて、音楽の権利関係の確認方法・JASRACが著作権を管理している楽曲の使用料算定方法・手続書類の作成方法などを説明しました。

特に注意を要するポイントとして、手続きを取るべき人はコンサートの主催者であり、出演者や演奏者ではないことに加え、著作物を利用する際の確認事項を5点挙げました。

＜著作物を利用する際の確認事項＞
・著作物に該当するのか？
・保護期間内のものか？
・利用方法はどの権利に該当するのか？
・権利制限規定には該当しないのか？
・手続き先はどこなのか？

また、JASRACのホームページ上にある管理作品データベースや使用料計算シミュレーションをモニター画面に表示して、音楽の権利関係について検索方法や検索結果の見方を解説したり、主催者育成セミナーで開催予定のコンサートについて使用料の見積もりを算出するなど、実践的な講義を通じて、受講者の理解を深めました。

６ 受講者の感想

当日参加された受講者からは、次のような感想をいただいております。
・イベントを主催する際に必要な知識を得ることができた。
・音楽の権利関係を検索できるサイトがあることを知らなかったので、これからは事前に調べて選曲の参考にしたい。
・JASRACについて支部が静岡にあることや本部が渋谷にあることを初めて知った。

他にも多数の好意的な感想をいただきました。

最後に

受講された主催者育成セミナー参加者の皆様、当日の進行を含め連絡対応をしていただいた梅田さん、この度はありがとうございました。

出張講座JASRACラーニングスクエアでは、今後も様々なテーマで著作権に関する講座を開催します。

（文責：事務局員）