出張講座 JASRACラーニングスクエア

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群馬県高等学校教育研究会 情報部会主催の講座「著作権にまつわる今どきの話題-AIやSNSを中心に-」が開催されました

2024年09月04日 学校向け 担当講師名:上野 達弘
群馬県高等学校教育研究会 情報部会主催の講座「著作権にまつわる今どきの話題-AIやSNSを中心に-」が開催されました

はじめに

2024年9月4日、JASRACラーニングスクエアの24回目の出張講座が、群馬県高等学校教育研究会 情報部会主催の下、オンラインで開催されました。その内容と当日の様子をご紹介します。

1 応募者について

今回の応募者は、群馬県立前橋高等学校 教諭の井上通宏さんです。

井上さんは、同校の情報科担当として教鞭をとる傍ら、群馬県内の高校教員が授業指導力の向上等を目的に集まる「群馬県高等学校教育研究会」の情報部会において事務局を担当されています。日ごろから文化庁やJASRACのホームページをチェックするなど、著作権関連の話題や最新の動向に関心を持たれているとのことです。

群馬県立前橋高等学校 教諭 井上通宏さん

高等学校では、2022年度の学習指導要領の改訂により、「情報Ⅰ」が必履修科目となりました。「情報Ⅰ」では、情報モラルの育成を図ることを目的として、著作物の適切な扱い方や著作権の保護・活用に関する教育を行うこととなっています。

群馬県では情報科目の専任教員が不足しており、県内の多くの学校において、他の教科の教員が掛け持ちで情報科目の授業を行っているそうです。

このような実情を踏まえ、同研究会の情報部会では、授業を行う教員自身に著作権の基礎や最新の動向を理解してもらい、生徒たちにも還元できるようにしたいと考え、JASRACラーニングスクエアにお申込みされました。また、デジタルネイティブ世代の生徒たちの興味を惹く授業ができるようにと、昨今話題の生成AIや生徒たちにとって馴染みの深いSNSをテーマにした講義を希望されました。

2 講師について

今回の出張講座の講師は、早稲田大学法学学術院の上野達弘教授です。

上野講師は、著作権法を中心とする知的財産法を専門としており、法とコンピュータ学会理事長、著作権法学会理事などを務めています。近時は、政府の審議会の委員としてAIと著作権をめぐる議論にも深く関わっています。応募者の想いを受けて、AIと著作権に関する研究の第一人者でもある上野講師が、今回の講座を担当することとなりました。

講師の上野達弘教授

3 受講者について

受講者は、群馬県内の公立・私立高等学校で情報科目を担当する教員の皆さんです。
当日は、群馬県内にある全77校の高等学校のうち、計24校の先生方がオンライン(Zoom)で講義を受講しました。

4 当日の様子・講義の内容について

今回の出張講座はオンライン形式で開催。講義は都内某所のスタジオから配信し、午後4時からおよそ60分間にわたって行われました。受講者の皆さんは、高等学校の授業後のすき間時間を活用して、講座に参加しました。

なお、JASRACラーニングスクエアにおいてスタジオを利用した配信を行うのは初めての試みです。

配信の様子

今回の講義テーマは「著作権にまつわる今どきの話題-AIやSNSを中心に-」です。当日は、著作権の基礎と最新の動向について、次の2つのトピックスを中心に講義が行われました。
**************************************************
1 著作権のあるものは何か?
2 どのような行為が著作権侵害になるか?
**************************************************

著作権法(第2条1項1号)では、著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したもの(以下略)」と規定されています。上野講師はこの規定を根拠に、「アイディアそのもの」や「創作性のない表現」は保護されないことを解説。実際に裁判になった事例を紹介しながら、著作権の基礎や考え方についてわかりやすく説明しました。

さらに上野講師は、昨今話題の生成AIと著作権をめぐる問題について、次の2つの論点を中心に解説を行いました。
① AI生成物に著作権(著作物性)は認められるか?
② 生成AIによる「学習」と「出力」は、著作権侵害に当たるか?

①の論点では、「思想・感情の有無」と「創作性の有無」の観点からAI生成物の著作権に関する考え方を説明しました。

AIによって生成された画像(「大学で著作権法を学んでいる男性」という指示(プロンプト)を入力して、実際に生成された画像)

②の論点については、現在もなお、激しく議論が交わされています。講義の中で上野講師は、AIと著作権をめぐる問題を議論する際には、「学習」と「出力」を混同せず、区別して論じることが重要であると強調しました。

AI学習と生成

このほかに、上野講師は、学校教育の現場で特に関わりのある著作権問題についても紹介。生徒にとって馴染みの深い「歌ってみた」や「踊ってみた」動画をインターネットやSNSにアップロードする際の注意点を詳しく説明しました。

講義終了後には質疑応答の時間が設けられ、受講者から「レポートなどでAI生成物を使用する際の出典明示の方法」や「米国著作権法(フェアユース規定)におけるAIと著作権に関する考え方」についての質問が寄せられました。上野講師は、終始和やかな雰囲気で解説。受講者の質問に対しても丁寧に回答されていました。

5 アンケートの結果

当日参加された受講者の皆様にはアンケートをお願いし、次のようなご意見をいただきました。

・具体的な事例、法制度の仕組み、判例などを取り上げて分かりやすく解説していただいたので理解が深まりました。身近な話題のため生徒にも紹介することができ、理解が深まる内容でした。
・生成AIの著作権や著作物の引用について、理解が深まり、授業でも実践できると思いました。
・今、必要でとてもためになる講義でした。今後重要性が増していくと思うので今からアンテナを張っておきたいと思います。

このほかにも、好意的な感想を多数いただきました。

最後に

受講された群馬県高等学校教育研究会 情報部会の皆様、当日の進行を含め事務対応をいただいた井上さん、そして講師の上野教授、このたびはありがとうございました。

出張講座JASRACラーニングスクエアでは、今後も様々なテーマで著作権に関する講座を開催します。

(文責:事務局員)

収録スタジオの様子

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